日本の着物文化を学ぶ、奈良きもの芸術専門学校

着物は日本を代表する民族衣装です。
私たち日本人は古来、お祝いやお別れの時などのあらゆるシーンにおいて、着物に袖を通すことで気持ちを表現してきました。
ここ最近では、来日外国人観光客も着物の着用を体験できるオプションツアーに進んで参加するようです。今や着物は、日本だけに留まらず海外からも注目を浴びています。
「日本が誇る着物文化を自分達の手で継承していきたい」、「着物を着てみたい」あるいは「作ってみたい」と思う若者が近年増えてきています。そうした想いから生まれたやる気を存分に発揮できる場所が、ここにあります。

私たち「奈良きもの芸術専門学校」は、昭和3年設立以来平成の現在に至るまで着物作りに思いきり打ち込める環境を提供し続けてきました。
着物を作ることを通して、着付けやマナー、伝統文化なども積極的に学ぶことができます。
奈良という魅力的なロケーションにより、遠方から入学を希望する学生も多いです。
では、着物について一体どんなことが勉強できるのか、最初に和裁教育についてお伝えします。

和裁教育

本校では、着物を作る際、『和裁教育指導三本柱』という下記の3つの心得を軸として指導していきます。

  1. 美しく着やすい着物
  2. 奥深い知識
  3. スピード

この数字は単なる項目ではなく、最も重要な心得順に並べています。
というのも、着物を仕立てるには、なにより「美しく着やすい着物」を作ることを基本におかなければなりません。これを基本原則として、次は「奥深い知識」を学んでいきます。ここで言う知識とは、着物作りに必要な知識のことです。布の選択や裁断、縫製方法などをひとつひとつ深く学んでいかなければ、完璧な着物を作ることはできません。
1から2へと段階を経たあとは、次に3の「スピード」となります。スピードとは仕立ての早さのことを指します。当然最初から仕立てのスピードを求められても無理がありますが、授業で何枚も仕立てていくにつれてコツを掴んでいくことで、スピードは自然と付いてきます。

以上のように、三本柱はプロの和裁師へ育てていくためのステップとして、大切な順番なのです。では、本校がこの三本柱に基づいてどのような授業を行っているのか、それぞれ詳しく述べていきます。

美しく着やすい着物

美しく着やすい着物着物作りの神髄は、まさしく「美しく着やすい着物」であることです。それ以下のクオリティであっては絶対になりません。
「美しく」というのは完成された着物の見た目が美しくあることを意味します。縫い目が細かく均一であり、布地に弛みなどがなく仕立てられた着物を美しい着物とみなします。その美しさは、そのまま「着心地の良さ」にも結び付くのです。
丁寧に縫われているゆえに着やすく着崩れもし難く、着ている人が大変心地の良い感覚に包まれるはずです。
「美しく着やすい着物」とは、着た人に喜びと心地よさを与え、なによりも着ているその方がより美しく見えるということを意味します。こうした「着る側の立場に立った喜ばれる仕立て」という着物作りの精神を、最初の第1段階で徹底的に学んでいきます。

奥深い知識

本校では1年次から、着物を裁断から仕上げまで全部一人で作り上げる教育をしています。これを「一貫システム」と呼んでいます。
この教育方針を取り入れている和裁の競合校はほかになく、本校だけが特化しています。本校の生徒は1年次で最初に裁断工程から学びますが、一般的な和裁学校では縫製技術の方を完全に身に着けたあとで裁断を学んでいきます。
では、本校はなぜ裁断から学ぶのかというと、実はこの裁断こそが、着物を美しく仕立てるために確実に押さえておかなければならない技術であるからです。
着物を仕立てる際、まずはお客様が選んだ反物を裁断することから始まります。お客様が気に入った反物の柄が、出来上がったときに綺麗に見えるよう考えながら裁断していきます。
そのあとに裁断された布同士を縫製していく工程に入りますが、縫製は間違えてもまた縫い直しが可能なのでさほど問題ではありません。しかし、裁断作業は切ってしまったら最後、やり直しがききません。お客様が気に入って購入した反物に対して失敗は絶対に許されないのです。
その責任感と緊張感を最初の1年次で徹底的に学ぶことが大切です。

着物は既製品以外、基本オーダーメイドの世界です。
お客様の寸法を測り、裁断縫製作業を行い、何日か後に完成品をお渡しする、という流れを和裁の世界ではたった一人で請け負うことが通常なのです。
その寸法からお渡しまでの流れを再現した形が、本校の「一貫システム」です。
他校のように学年ごとに一つの技術を完璧に極めていくのももちろんひとつの教育ですが、本校では将来独立した際をシミュレートできるよう、まずは現実での順番通りに寸法裁断から指導します。「寸法裁断が終わったら次に縫製し仕上げに掛かる」、この工程を何度も何度も繰り返します。一連の流れを繰り返すことで、頭ではなく身体に工程が染み付いていくものです。
そして、いつしかコツを掴み、たどたどしい手元から無駄な動きが削られ、洗練されたスマートな作業ができるようになっていきます。
第2段階では、ひとつひとつの工程を奥深くじっくりと学んでいき自身の知識とすることを学んでいきます。

スピード

スピードとは、仕立てのスピード、それと同時にお渡しまでの期間のことを言います。
仕立てのスピードというのは、最初から求めることはできませんが、何枚も何枚も仕立てていくにつれ徐々にコツを掴み、自然と仕立てのスピードが上がっていくものです。経験値ならではのスキルとも言えます。
もちろんスピードだけを重視し、結果作りが不完全になってしまったら本末転倒です。そのため、完成品がどこに出しても恥ずかしくないくらい完璧であり、尚且つ縫製などの作業も早いことが、仕立てのスピードとなります。

また、たとえ納期よりも早い日程でお渡しできたとしても、完成品がお客様にとって気に入らない状態で出来上がっていたら意味がありません。一方、最初の納期の段階で、お客 様もしくは提携先企業様の希望通りのものが出来上がっていれば、これ以上手直しの必要がなく納期が延びることもありません。

スピードを求めるがゆえ不完全なものを提出する羽目になるのではなく、納期までに間に合うスケジュールを組みつつ、程良い工程スピードで仕上がりの最終確認まで見通すのです。これもまた納期に対する「スピード」という、大事な3本柱の一つとなります。

着物を作りながら学ぶ多彩なカリキュラム

本校では和裁技術を取得しながら、着付けやマナー、伝統文化、就職指導などの多彩な教養や実務を学ぶことができます。和裁を希望して本校に入学する生徒がほとんどですが、教養として、または将来の幅を広げるためにも様々なカリキュラムを用意しています。
その教養を和裁の片手間で終わらせることのないように、本校では毎週水曜日に授業として組み込むようにしています。
和裁のスペシャリストになるうえで、日本の古き良き伝統を学んでいくことは決して無駄ではありません。

着付け

職種として和裁をする人を和裁士、着付けをする人を着付け師と呼びます。
この授業では、まずは自分1人で着付け(自装)ができること、しかも美しく着こなせるまでを指導します。そして、次に人に対しての着付け(他装)を指導します。
自装ができるから他装も簡単にできる、という訳ではありません。
他装は、相手の体型もしくは体調にまで気を遣い、着こなしのお好みを伺いながら、疲れさせないよう、より手早く丁寧にその人に一番似合う着付けに仕上げなければなりせん。これが自装と根本的に相違するポイントです。
本校では国家検定試験にも対応できるような授業を行っています。

マナー

2年間もしくは4年間という限られた期間の中で、和装技術をより極めていくことは本校に入学したからには大変重要です。しかし、卒業後、その技術だけでは社会に適応することは到底できません。
どこかの集団に入り、同期や先輩、お客様と対話していくには、「マナー」というものが根底になくてはならないのです。本校ではこのマナーを授業として組み込んでいます。
まずは身だしなみを整えることから入ります。そして、他人を不快にさせない装いや立ち居振る舞い、さらには普段の生活に密着する暮らしのマナーなどを指導していきます。
そこまで指導を徹底した結果、「本校では職員室に生徒が入室する際、教師よりも生徒の方が丁寧な立ち居振る舞いだった」という逸話があるほどに、礼儀が身に付くようになるのです

伝統文化

日本の伝統文化である茶道は毎週、華道は隔週で授業として組み込まれています。
茶道は、「裏千家」の流儀にのっとった指導です。お茶の点て方や頂き方、茶室での作法などをしっかり学んでいくことで、資格や免状も取得することができます。
また、奈良という好立地条件から、正倉院展でのお茶席も担当しています。

華道の流派は、「池坊」です。お花が美しく活けられていると、それだけで心が華やぎます。こちらも学年に合わせて免状が取得できます。
同時に、フラワーアレンジメントも授業として行っております。こちらは華道よりはカジュアルですが、花をより美しく魅せる精神は華道と変わりません

就職指導

本校では入学してすぐにガイダンスを行います。今の自分を知るために自己分析を行い、その結果に基づいて「今後どんなことを学んでいきたいのか」を明確にしていくのです。
また、社会に出て困らないよう、パソコンやビジネスマナーも指導します。内容は、履歴書の書き方や面接での受け答え方、電話の対応やビジネス文書の書き方などです。いざその時になっても困惑しないよう、1年次からより実践に近い形で繰り返し実習していきます。

このように、和裁以外のカリキュラムは、4年制学科の場合はマナー実習を1、2、3年と、就職活動マナーに関しては1年次から取り組んでいます。
本校では和装だけではなく一般教養やマナー、就活時の心得など、生徒がいざそのシーンに置かれても焦ったりしないよう、徹底的に指導していく方針を取っています。

本校ならではの強み

資格取得制度

本校では4年制に和裁特別専門学科と和裁テクニカル学科を、2年制にきものトータル学科を設けております。
4年制学科を卒業すると「高度専門士」という称号が付与されます。本校の強みはまさにここにあります。というのも、他校の着物専門学校では同じく4年制であっても称号が取れるところと取れないところがありますが、本校では必ず取得できるのです。
そして、高度専門士を取得すると、最終学歴が大卒と同等になります。そのため、卒業後は直接大学院にも受験が可能です

教材無料支給制度

将来への幅広い可能性に備えて、在学中に反物などの教材を無料で貸し出す「教材無料支給制度」というシステムを行っています。
一流呉服店と提携することで、自分では用意することが難しい高価な反物を提供していただき、それを教材として充分に経験を積むことができるという内容です。提供される反物は全てオーダーメイドなので、その方の寸法に合わせた着心地の良い着物をつくる技術を身につけることができます。
また、この経験を活かし、本校独自の「自営和裁士独立サポート制度」という制度を利用して、卒業後は仕事として本校と個人的に契約をする生徒もいます。

他校との違い

本校はよく専修学校一般課程、各種学校、無認可校(職業訓練施設など)と比較されます。
本校と無認可校の両校見学をして、その結果本校を選んだ生徒に理由を尋ねてみると「学校らしいから」という回答が返ってきました。
実は無認可校は学ぶというよりも、どちらかと言えば「仕事をする」施設です。そのためお給料が発生する場合もあります。
学費が安いうえにお給料も貰えて技術も身に付くという、一見理想的な施設ではありますが、その反面卒業しても専門士の資格が取れません。学歴にもなりませんので、最終学歴も無認可校に入学する前 (高卒など)のものとなります。
一方、本校は奈良県認可の専門学校(専修学校専門課程)です。4年制学科では卒業と同時に高度専門士の称号が付与され、学歴も4年制大学と同等にみなされるというのは既述の通りですが、その後社会に出た際に、企業先によっては給与面も大卒として扱われる場合があります。

専門学校と無認可校には、取得できる称号や授業内容などに明らかな違いがあります。それをよく確認して学校選びのヒントにしてください。

卒業後の進路

「着物が好き」「和裁が好き」という想いで勉強してきているため、それらに関係する仕事に就く生徒が大多数です。
呉服関係企業に就職して仕立ての仕事に就く生徒もいれば、和裁の資格を活かして何軒かの呉服店と個人契約をし、自営和裁士として在宅で仕立て仕事をする生徒もいます。具体的には、歌舞伎などの舞台衣装を担当している例もあります。
在宅自営は結婚後も家事や子育てをしながらでも行うことができるため、将来のライフスタイルの幅も広がるでしょう。

また、和裁の道だけではなく、着付け師の方向に進む生徒もいます。
呉服店でのお客様の試着対応や、ブライダルやフォトスタジオなどの着付け師といったように、着付け師の仕事は豊富です。企業によっては着付け師を「着物アドバイザー」と呼ぶこともあります。

ほかにも、和裁や着付けという実践業務だけではなく、卸しや検品、検品伝票を扱うといった仕事に就く生徒もいます。接客という形で着物と直接触れ合う職業ではありませんが、それでも和裁や和服のことを十分に知っていないとできない業務です。
生徒が「間接的にでも着物の世界に接していたい」と思ってくれるのは、本校にとって大変誇り高いことです。

最後に

本校は着物の学校です。しかし、ときには東大寺の行事に参加したり正倉院にてお茶会を開催したりもします。こうした奈良県ならではのイベントも豊富です。
大好きな着物に触れながら教養を学び、イベントで地域の人たちと交流しながら生徒同士でも人間関係を構築することができます。それが、私たち奈良きもの芸術専門学校です。
私たちは、日本の伝統文化である着物を、厳しくも楽しく、そして永く受け継いでいけたらと願っております。

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