きものの知識を基礎から学ぶ

奈良きもの芸術専門学校にはいくつかの学科がございます。入寮が可能な和裁特別専門コースのほか、和裁テクニカル学科と、きものトータル学科があり、共にきものの基礎的な知識と技術を身に着けることができる専門コースです。将来、きものに携わる仕事に就きたい、きものを仕立てる和裁師として自立した生活を送りたいと望む学生に、将来必ず役に立つ技術とノウハウを指導しております。即戦力として、様々な企業やメーカーで卒業生の多くが活躍している実績のある学科です。

和裁テクニカルコースの魅力

4年間できものの基礎から学び、一人でオリジナルのきものを最初から最後まで仕立てることができるようになるプロフェッショナルを育成する通学制のコースです。最初は、誰しも何も分からない状態からスタートするものです。きものの仕立てで最も基本となる運針(基礎縫い)から始まり、1年次から、一人できもの1枚を最後まで仕上げるまでに成長していきます。

最終学年に至るまでに、最も高度な技術が必要とされる振袖や訪問着などの礼装用までの、様々な種類のきものを仕立てる技術を身に着けることができます。また、オーダーメイドの高級反物にも挑戦し、既製品とは比べ物にならない、着やすいきものの技術を習得することができます。4年間で身に着けた知識と技術で、和裁技能士2級(国)の取得を目指します。

和文化やマナーなど、就職する際に役立つ知識も学び、卒業後は和裁士はもちろん、着付師、販売員など、きもの関連分野で幅広く活躍することができます。

きものトータルコースの魅力

きものトータルコースは、将来、きものに関連する企業やブライダル等の関連企業で活躍することができる、「きものトータルプロ」を養成する2年間の通学制のコースです。まさに、きもののオールラウンドプレーヤーとして、卒業後には様々な分野で幅広く活躍することが期待できます。

きものトータル学科では、和裁実習、着付け、ディスプレイ、販売実習など、きものについての専門科目以外に、社会人として必要となるビジネスマナーやマーケティング、販売士学、ワードやエクセルなどのパソコンスキル、簿記などのビジネス関連科目、さらに茶道や華道などの和文化に至るまで、驚くほど多彩なカリキュラムがございます。

仕事としてきものを扱うにあたっては、きもののことだけではなく、きものの歴史や背景、流行などの幅広い知識とそれをアウトプットできる技術も必要とされます。そのため、カリキュラムの全てが、どのような分野でも役立つものばかりです。ここまで幅広い知識を身に着けることは他ではなかなか難しく、本学科の卒業生からは、様々な就職先で習得した知識や技術を発揮して、充実した日々を送っているとの嬉しい報告が寄せられております。

担当講師インタビュー

和装テクニカルコースときものトータルコースの両方で、和裁実習を中心に、きものの基礎から応用までを指導している担当講師の後藤先生に、きものの道へ進んだきっかけや、講師として指導していくうえで大切にしていることについて伺いました。これから、きものの道に進みたいと思っている方、今はまだ、きものへの興味はそれほどではないけれど、ちょっと知ってみたいという方に参考にしていただきたいと思います。

きものに興味を持ったきっかけ、学ぼうと思ったきっかけは何ですか?

私が高校3年生の時に、父が亡くなりました。本当は、大学へ進学し、その後母校へ来てほしいと言われておりましたが、母親からのアドバイスで、「技術を身に着け、手に職を持っていたほうがきっと役に立つ」と言われました。そこで、色々と考えた結果、きものの道を選ぶことに決め、どこの学校へ入学するか事前に母と共にいろいろ調べていく中で本学園のことを知り、入学を決めました。

私の母自身は、特別な技術を持っておりませんでした。その経験から女性でも技術を身に着け、自立できる生活の必要性を強く感じ、娘の私には技術を身に着け、手に職をつけるよう強く言ってくれたようです。

私は、最初からきものに興味を持っていた、というわけではありませんでした。

通学制の、今でいう和裁テクニカルコースへ入学し、そこで一生懸命学びました。きものの魅力を知るにつれ、きものについての興味もどんどん湧いてきて、別学科である和裁特別専門学科に魅力を感じて転入したいと思いましたが、昔は距離的に厳しく、その願いを叶えることはできませんでした。通学できる和裁テクニカルコースで、毎日必死に学んだことを思い出します。

最初は母の薦めで本学園へ入学いたしましたが、もともと中途半端なことが嫌いな性格で、やり始めたらとことんやり尽くすタイプです。この性格もあってか、きものの素晴らしさを知ったら楽しくなってきて、こうして講師まで務めるまでになりました。今では、この道を薦めてくれた母に大変感謝しております。

先生が考えるきものの魅力とは何ですか?

私が思う「きものの魅力」とは、基本を崩さずに、時代の流れに合わせて変化させることができることだと思います。もし、「きものとはこうあるべきだ」という形のまま、時代の流れに合わせて柔軟に変化させることができなければ、今のように、きものを着るという文化はここまで残らなかったかもしれません。

世界には、きもののように伝統衣装として継承されている国もありますが、時代の流行と共に変化することができず、中には、歴史の一部として語られるのみに至る場合もあります。きものは日本の歴史ある伝統衣装であり、価格も大変高価な物も数多くございます。それでも、日本から、きものが無くなるということはないのではないでしょうか。基本は崩さず、時代の流れや流行に沿って変化しながら、次の世代へ継承していくということを思っております。

また、きものは、着られなくなったら一旦仕立てをほどいて、洋服よりも簡単に、他の物に作り変えることができます。もちろん洋服でもできるのですが、きものと洋服の違いの一つに、裁断方法の違いがございます。洋服は、立体裁断という方法で仕立てられているため、ほどいた時に、きものほど平面な生地にはなりません。そのため、他の物に作り変えるということが、きものよりも難しいようです。

お気に入りだったきものを、そのままの形で残していくのもよいのですが、いつも身に着けられる形に変えることができるのも、きものの魅力の一つではないでしょうか。

今では、このような技術を学べてよかったと、心から思っております。

先生が考える美しく、着やすいきものとは?

本校の和裁教育指導三本柱の一つに、「美しく着やすいきもの」がございます。私たちは、一人一人体型が異なります。背の高い人もいれば、低い方もいらっしゃいます。細身の方もいらっしゃれば、ふくよかな方もいらっしゃいます。もちろん、手の長さ、足の長さも人それぞれ異なります。

美しく着やすいきものを仕立てるには、まず、その方の体型に応じて仕立てる必要がございます。また、それとともに、中の縫い代の収め方にコツがございます。目には見えない部分の、そういった細かいところを丁寧に仕上げないと、着やすいきものはできないものなのです。

着なれた人が着れば、きものに片手を通しただけで、着やすいかどうかがはっきり分かります。そのくらい、中の縫い代の仕立て方というのは、着やすさを左右する大切なポイントになります。そのため、そういった細かいコツを身に着けることは、きものを仕立てるうえでは大変重要なことなのです。

美しく着やすいきものとは、「肌着を通して、これは着やすいと感じること」「また次の機会にも同じきものを着たいと思わせること」であると思います。

きものの仕立てを依頼されたお客様から、「このきものは、仕立てが綺麗で着やすいから、何度でもこのきものを着て出かけてしまいます」と言っていただけるような仕立て方を指導して参りたいと考えております。それが、卒業後の学生の活躍にきっと役立つと信じており、そういった大切なことを伝え続けていきたいと考えております。

きものをとりまく和裁師と着付け師の仕事の違いは何ですか?

きものを扱う仕事の中で、代表的な職業といえば、和裁師と着付け師だといえるでしょう。この二つの仕事で大切なこととは、何でしょうか。学生には、一流の和裁師になるためには、「根気、忍耐力、理解力」が必ず必要になると伝えています。学生は、講義で講師の話を聞き、教えてもらったことをすぐに理解し、それを製作につなげていくことができなければ、なかなか良い物はできません。

格の高い絵羽模様の留袖、振袖、色留袖や訪問着などのように、きものの見頃から袖まで1枚の絵のように連続した大柄な模様が描かれている場合、肩周りの絵羽が合う寸法によってそれぞれ違ってきます。それをどのようにしたら良いのかということが、わかっていなければなりません。絵羽物を見て「なぜこの襟は片方が長くて、片方が短いのか?」など、最初は答えが分からない様々な疑問も、学んでいくうちに自然と「こういうことだったのか」と理解することができるようになります。そして理解の次は、実践です。まずは我々講師の力を借りながら、ゆくゆくは自分だけの力で形にできるように、実習を重ねます。そのためには根気が必要不可欠であり、また、仮に初めは理解や実践ができなくても、選んだ道を学びぬくという忍耐力も必要であると考えています。

学生達には、このように、幅広く色々なことを教えていきたいと思っております。一方、着付け師で大切なことは、「着る人の体型に応じて素早く着付けられること」です。着付けに時間がかかることによって、着る人は疲れてしまいます。また、長い時間がかかってしまうと、きものにもよれが生じます。着崩れのしない着せ方、着られる方の体型に応じて素早く着せることが大切です。全国で、着付け師として活躍する方も大勢いらっしゃいますが、和裁の知識を持っている着付け師となると、活躍の場が大きく変わってきます。例えば、お客様がお持ちになったきものに万が一ほつれがあった場合、すぐに直すことができます。お客様に合わせて、寸法を調整することもできます。このような技術を持った着付け師は、大変重宝されます。

和裁師も着付け師も、きものをお客様に提供するうえで、とても大切な仕事といえます。共に共通しているのは、「時間内に仕上げる必要がある」ということです。お客様は期待を持ってお待ちいただいているということを忘れずに、決められた期日、時間内で仕上げることは大変重要なことです。和裁実習の場合でも、プロになった場合を見据えて、そのきものの向こうに、「心待ちにしているお客様を想像しながら仕上げること」を伝えるようにしております。


指導する時に気をつけていることを教えてください。

和裁の専門学校では、知識だけでなく、技術も習得しなければなりません。一斉に同じことを教えても、一人一人の能力や習得力に違いがございます。そこで、個別に応じた指導の仕方や進め方がどうしても必要になります。1回で理解できる学生もいれば、中には、5回言っても分からない学生もいますが、講師としては、理解してもらえるまで何度でも、納得のいくまで指導することを大切にしています。

1クラスに大体20名くらいの生徒がおりますが、授業を始める前に毎朝、生徒の顔を一人一人見渡すようにしています。学生一人一人の表情や様子などから、今日のその子の様子に合わせて、指導の仕方を考えるようにしております。また、どのように伝えたらこの学生は分かるだろうか、どのように教えたらよいのか、などといったことも意識するようにしております。入学して間もない、きものについてもまだ良く分からない学生であれば、なるべく飽きのこないように指導することと、どうしたら和裁に興味を持ってもらえるだろうかと考えながら授業を進めるようにしております。

課題をこなして卒業させるのが目的ではなく、和裁の講師としては「一流の和裁師を育成する」ことを最終目標として考えており、このようなことに気を配りながら日々取り組んでおります。

学校での学生の皆さんの様子はいかがですか?

課題にも熱心に取り組み、講義にも集中して聞いてくれています。ただ、私が学んでいた時代は、自分達がどんどん吸収したい、知りたい、いろいろ勉強していきたいと思っていたので、どんなことでも質問していましたが、最近は質問する学生が昔より少ないように感じることがあります。

そこで、休み時間には、学生と授業には関係のない話をしてコミュニケーションを図るようにしています。昨日あったことを話したり、笑いあったりして、授業とは違った表情を見せてくれるのも楽しいことです。このように、教室以外の場でコミュニケーションが取れるようになると、授業では質問できなかった学生も自然に質問できるようになり、授業中の雰囲気も良くなります。

指導者としてのやりがいは?

これまで沢山の学生を指導しいてまいりましたが、なかなか理解できない生徒も中にはいます。そういった学生にも分かってもらえるように、どのように伝えたら理解してもらえるかを何度も考えながら指導して、やっとできるようになった時には、大変嬉しく思います。

このように、苦労して覚えた学生の分かった時の顔、できた時の晴れやかな表情を見るのは楽しく、やりがいを感じます。また、卒業生が、就職先での活動状況を報告するために学校を訪ねてくれることも大変嬉しいことで、こういった時にもやりがいを感じております。

これからきものに関わる仕事に就きたいと考えている方へ

きものの知識や技術を身に着けることは、ただ単に勉強すればよいという単純なことではありません。何度も練習することが必要であり、最後まで諦めずにやり続けることが大切になります。学生時代に培った努力と忍耐というものは、他の大学では得られないことでしょう。きものを仕立てる技術とともに、大切な何かがきっと得られることだと思います。

卒業後、企業に就職する人や結婚して家庭に入る人など、それぞれの選択がありますが、どのような状況になっても、学生時代に諦めずにやりきったという体験は、どのような場面でもきっと役立つことだと信じております。仕事をしていても、家庭に入って子育てをしていても、様々な困難にぶつかることがあることでしょう。しかし、ここで培った忍耐力というのは必ず役立つと思います。

[◀コラム一覧に戻る]

  • 資料請求・お問い合わせ
  • 体験入学・全国説明会
  • AO入試のご案内
  • 社会人、大学・短大・専門学校生の方へ
  • 【一般の方向け】和裁・洋裁チケット教室
  • [Blog] 奈良deきものna 職員ブログ
  • [LINE]
  • コラム一覧
ページの先頭へ